
2004年9月、エレファントカシマシはアルバム「風」を発表しました。
前作「扉」の発表からわずか半年です。
アルバムごとの変化が大きいEMI時代の中でも、「扉」→「風」の変化は最もスリルがあって。
そしてこの「風」であらたにまとった空気は?今現在、エレファントカシマシのまとった明るい空気に通じるものがあると思うんだよね。
今作「風」は明るい作品です。
驚きです。
前作「扉」からわずか半年での新作「風」。
で、驚きなのはただ短期間でニューアルバムができた、ってことだけじゃなく?
前作のムードを完全に振り切ってることなんだよね。
前の「扉」はいいんだよ。もちろん。でも暗かったんだよね。
当時宮本さんがトラブルですっごい?大変だった、ってのもあったんだけど。
で、「風」は、明るい。(という、事実。)
一部の曲とか、歌詞とかをわざわざ深読みして、まだ暗いよとか言わなくてもいいよね。
もう音が明るいから、うん。
もう1曲目「平成理想主義」が明るくて。「風」を象徴する作品。
(ここでも歌詞が暗い、とか悲観的、とかはあえて言わない。宮本さんにとって歌詞はあとに来るらしいし。)
この曲ははじめて聴いたとき「ガストロンジャー」と同じくらい衝撃を感じたんじゃない?
とにかくかっこいい。やっぱりサビの裏声になるとこが綺麗で好きです。
こういう裏声の表現や、あと最後にゆったりとした曲調に変わって終わるんだけど。
ここはエレファントカシマシ全部の作品の中でももっとも優しい感じがする。
これらは「扉」ではありえないからね。
人気曲「友達がいるのさ」。で・・・神曲「風」。
「友達がいるのさ」。
かわいいタイトルだね。
ファンの間で非常に人気がある曲です。
(最後、ギターのリフがどんどん高くなっていくのが好きです。)
「出かけよう」サビで繰り返されるこのフレーズが素晴らしい。
こんなありふれた言葉をここまで感動的に歌い上げる曲はないぞ・・・。

で、忘れちゃいけないのが。
そう。
アルバム「風」には最後にずばり「風」という曲が入ってるんだけど。
ど、どうやったらこんなのできんねん・・・?ってくらい傑作。
か、かっこいい。
(この曲にどうこう言うのはむずかしいなぁ・・・。)
「シグナル」とか「桜の花、舞い上がる道を」みたいな、ズ抜けたキラーチューンだけど。
石森さんの「ミヤジ(宮本さん)が死ぬなんて考えられない」という発言がもとに生まれたとかなんとかいうけど。
この曲そういうフレーズも出てくるけど、歌詞全体はけっこう莫としてるんだよね。
多面的に聴けると思います。
音像もやさしく、せつなく、懐かしい。
聴く人それぞれが、この曲の中になにか大事なものを見つけることができると思う。
弾き語りで始まって、徐々に盛り上がって。
エレカシ流「Fake Plastic Trees」なのかな?
なんか、この曲だけは流し聴き出できないんだよね。ちょっと襟を正すというか。
生涯で「風」を聴ける機会を一度でもむだにしたくないから。
「扉」と「風」は双子の作品か?
暗い15thアルバム「扉」、そして明るい16thアルバム「風」。
似通っていながら、対照的な作品です。
(個人的に「扉」は黒シャツの宮本さん、「風」は白シャツの宮本さんのイメージ。)
この2作は双子のアルバムのような気がする・・・ときも、ある。

なんじゃい?
発表の時期もわずか半年しかたっておらず、「風」には「扉」制作時にすでに存在していた曲も収録されてて。
(なによりアルバムの構成が、曲の並びのバランスがそっくりです。)
でも一方で、先に書いたように「扉」→「風」はかなり大きな変化、重要な変化をしてます。
この時は、バンドの、宮本さんの、進化したいという内的な欲求と、周りの事件や関わる人といった外的な条件が、すごくうまくリンクしたんじゃなかろうか。
バンドを長くやってるとこういう神秘的なことが起きちゃうのでしょうか。
まとめ
EMI時代、エレファントカシマシはあまりセールスには恵まれていませんでした・・・。

ギャース・・・。
しかし、相変わらずのキレッキレの傑作を積み重ねていたのです。
この作品で、花ひらくように、少なくとも、花ひらく準備になるように。
少なくとも、やり残したことがないように・・・。
そして今、「風」が吹き始めます。
「町を見下ろす丘」が見えてきました。
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