イーストウッドの不倫の恋「マディソン郡の橋」。美しき永遠の4日間。世界的ベストセラーを映画化。

イーストウッド映画の風景写真 映画
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アイオワ州の風景写真

クリントイーストウッドが演じるロバートが雨の中たたずむシーンはイーストウッド映画史上屈指の名シーンです。この人監督なんですがこの演技。この表情。〈監督兼主演〉の極みです。

イーストウッド、異色の恋愛映画「マディソン郡の橋」。

「マディソン郡の橋」はイーストウッドの映画のなかで異質なんですね。「恋愛映画」なんです。世界的なベストセラーとなった小説の映画化です。

この原作の小説も読みました。自分はこの小説すごく好きだった記憶があります。しかしイーストウッドがこれを監督して映画化するのは意外でしたね。

というのも、原作はロマンチックで情緒あふれるやさしいストーリーでして。いわば女性的な物語なんです。

それを「ファイター」で「ガンマン」のイーストウッドが映画化する・・・。流血シーンを入れなきゃ気がすまないイーストウッドがです。

まあイーストウッドがやることになった経緯も複雑なんですね。今作はもともとスピルバーグも担当してたりとか。キャスティングも揉めました。

中年の恋、浮気なんですが。クリントイーストウッド監督・主演。メリル・ストリープが相手役。(相手役がストリープであることにイーストウッドはこだわりました。)

実は原作の世界観の繊細さは(心理も夢のような情景も)、小説という媒体のみで成立しえるもので。どんな監督でもこの情緒を表現しきれないのではないかと思われます。

実際この点は映画化するうえでの課題でして、とくに本国アメリカでは観客の興味をひきました。主演の二人のキャスティングについても「いい・悪い」両方の意見がありました。

もちろん映画は原作を再現する必要も義務もないですが、原作のエッセンスだけはそのままにしておかねばなりません。とくに誰もが知る大ベストセラー作品です。

主人公ロバート・キンケイドを演じるイーストウッドは当時もう60歳を超えていました。ヒロインのフランチェスカを演じるストリープより15歳以上も年上です。

中年の恋をテーマとした作品とはいえ、さすがに齢をとりすぎてたイーストウッド。しかしイーストウッドは照明でしわを目立たなくさせることを拒みました。ありのままの自分で勝負したんですね。

フランチェスカも原作に忠実ならばイタリア人女性をキャスティングするべきなのですが。イーストウッドはメリル・ストリープを強く推薦し、結果的に大物同士の共演となったわけです。

世界一有名な不倫の恋。

この作品は、もともと物議をかもす主題をあつかっています。物語の中心は浮気、不倫の恋であり、ストーリーはこれを美化したものとなっています。

この点は原作のときよりも、映画化された際のほうが指摘されました。映像化されたらあらためて生々しく感じられたのです。女性にも男性にもストーリーを受け入れられない人が一定数います。

一方で、二人の浮気の恋を応援する人たちもいます。フランチェスカが車を降りてロバートのもとへ向かおうかと逡巡しているとき、「私なら降りるわ」という女性の観客もいたんです。

だからこの作品には倫理や各々の立場のことをもち込まないように。こうした恋がいくばくか成立した虚構性を汲んで、こころに沁みる切なさを味わうべき作品です。

ずっと言われ続けることですが、あの雨が降る中のシーン。フランチェスカがロバートと共に生きていくことを選べたであろう最後のチャンス。

これは結末を知っていても、見るたびに「どっちにするの?」と観客は息をのんでしまいます。大女優の演技がじっくり見れる名シーンです。

そしてこの夫リチャード(浮気されてしまう側です)も悪い人でないから、切ないんですね。この夫はただ平凡なだけで。このリチャードもいいキャラクターなんです・・・。

この作品でもネタバレはまずいのでしょうか。原作が世界的ベストセラーで、映画も「たった4日間、奇跡の恋」と大々的に謳われてるんですが。

みんなこの2人の最終的運命は知ってるわけです。言うまでもなく〈悲劇〉にカテゴリー分けされる作品です。

主人公たちの本懐は、ついに叶えられません。しかしシェイクスピアの悲劇に対するように、叶わない想いを味わうために(映画を、舞台を)見るわけです。

カメ
カメ

「泣くために見る」作品です。

美しい映像。ジャック・N・グリーンの仕事。

撮影技術についてなんですが。この「マディソン郡の橋」のときと今とでは撮影担当者が変わってるんです。イーストウッドは優秀なスタッフを持ち、ファミリーとして信頼し手放しません。

当時はジャック・N・グリーンという人で、長い間イーストウッドの映画で撮影を担当してたんです。(現在はトム・スターンという人。)

実は「マディソン郡の橋」の映画化の成功の立役者はこの人かもしれません。光やロケ地の効果を計算し、繊細に丁寧に仕事をしました。

原作の夢のような恋愛模様を的確に映像化したことが評価されています。今のトム・スターンの現代的な光で撮影したら作品の効果が弱まっていたでしょう。

「マディソン郡の橋」のロケ地の魅力。

この作品は撮影されたロケ地の環境、距離感がほんとうにいいんですよね。本当に実在のローズマン・ブリッジと、その近くのかっこうの家をそのままロケに使用してるんです。

この映画につくった「セット」はひとつもなくて。アイオワ州マディソン郡の実在の場所で撮られてます。(もちろん「フランチェスカの家」自体は架空ですが。)

たまたま選ばれたこの家が(ロケのために大掃除された)、雰囲気最高で。探し出した撮影隊の努力の賜物です。このストーリーでは実際のロケ地の風景や距離感が多大な効果を発揮してます。

フランチェスカの家からローズマン・ブリッジ(屋根付きの橋)までが3キロ。これが絶妙な距離なんですよね。そこへ向かう車の中での二人の会話。

距離が近すぎたらすぐに着いてしまい会話が発展しません。遠すぎたら車の中だけで話過ぎてきっと間がもたないんです。3キロだからちょうど互いのことを少しだけ知れる時間が生まれました。

だから橋や家に立ち寄って会話を続け、親密になれたんです。中心の町とフランチェスカの家の距離も重要です。これがもっと近かったら2人の不倫は町の人間にばれちゃったでしょう。

フランチェスカの家は周囲の畑とか路の様子も美しく、これもドラマを彩りました。路を向こうからやってくる車を待ち、眺めるときの秘密の期待。

家で鳴り続ける電話をとりに大急ぎで畑のそばをかけていくシーンとか、みんな魅力的なんですね。これらも全部この素晴らしいロケ地が生んでくれたんです。

まとめ:観光名所になった橋。

このローズマン・ブリッジは本と映画の影響で観光名所になってます。日本で本が流行したときは日本人観光客がツアーを組んで橋を見に行きました。

そのときちょうどイーストウッドが今作を撮影しており、観光客は橋の近くまで行けなかったこともあったようです。なんと・・・。

また橋も、撮影で使用された「フランチェスカの家」もその後放火されちゃったんですね・・・。(ただ橋は再建されています。)

この映画は、人は愛よりロマンスを上においても良いのではないかという問いと答えの両方になります。

男でも女でも一定数、このストーリーを受け入れない人がいます。しかし、一定数は受け入れられます。そのときは理屈抜きで受け入れられるんです。人生の中で、ロマンスの喪失を味わってきたのかも。

フランチェスカの夫、リチャードの死のシーンも感動的でした。「もしかして、夢があったんじゃ?」ロマンチックでない平凡な夫の一生も心を打つものはありました。

イーストウッドを知れる本、いっぱいあるけど・・・。自分が持ってるのからオススメの一冊です。

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