宇宙映画ならイーストウッドの「スペース カウボーイ」がある。宇宙に向かった4人の老人の運命は。

イーストウッド映画の風景写真 映画
スポンサーリンク
宇宙空間の写真

さまざまなジャンルに挑戦するイーストウッドが、この「スペース カウボーイ」ではなんと宇宙に乗り出しました。

西部劇の荒野や酒場でもなく。ロサンゼルスの犯罪の街でもありません。今やスペースシャトルの中にいます。

シャトルの真っ白な、病院みたいな内部。円い窓の外に浮かぶ地球。かつてない背景に、クリントイーストウッドが立ちます。

たいてい一匹オオカミのイーストウッドですが、今作では仲間と4人で宇宙の冒険に挑みます。みんな個性強し・・・。

まあ「スペース カウボーイ」というタイトルだから。半分くらいは西部劇を連想させとくイーストウッド。

宇宙へ旅立つのは豪華な大物俳優たち。

4人の老人たちが宇宙へ向かう。かつて空軍の英雄だったメンバーです。演じるのはクリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナー。

伝説のチーム。この4名みんな大物俳優なんですが、これもきっと日本と本国アメリカとでは知名度は違ってますね。

日本では、イーストウッドはまあみんな知ってると思います。次にトミー・リー・ジョーンズも「メン・イン・ブラック」がありますし、あとジョージアのCMで宇宙人役やってるじゃないですか。

トミー・リー・ジョーンズは親日家で。きつい顔立ちで抜けた演技をするギャップを狙ってやってます・・・。

ドナルド・サザーランドはキーファー・サザーランドの父親なんですよ。(キーファーはドラマ「24」のジャック・バウアーをやってた人。)もともとお父さんが超有名俳優なんですね。顔もめっちゃ似てますね。

で、自分は4人目のジェームズ・ガーナーという人を知らなかったんですが。調べてみたら「大脱走」に出てますね、この人。

「大脱走」はスティーブ・マックイーンやチャールズ・ブロンソンも出演した超古典作品。自分が知らないだけでこの人が一番大物俳優なのか・・・。たしかに存在感があります。

イーストウッドだからこれだけ豪華なメンツを集められました。

トミー・リー・ジョーンズをもっと知りたくなりました。

1950年代。かつて宇宙をめざしていた4人の空軍のメンバーがいました。しかしその夢を奪われ・・・。(NASAが宇宙開発の座を奪ってしまうんです。)4人は無念、お払い箱に。

今おじいちゃんになった4人。ここにきてかつての夢がよみがえることに。むかしの通信衛星が宇宙空間でトラブります。このままでは地球に落下・・・。

これをなおせるのは設計者のフランク(クリントイーストウッド)とかつての元空軍メンバーの仲間たちだけなのです。「おれたちにしかなおせない!」

しかしいまのNASAのお偉いさんはかつて空軍時代に自分たちの夢を奪った張本人。恨みと確執の中、それでも仲間を招集します。(死んでないです。)

これもいわゆる「伝説の男がよみがえった」モノではありますね。しかし今作ではトミー・リー・ジョーンズ演じる操縦士のホークの存在が大きいです。今までのイーストウッド主演作品にはなかった〈仲間、かつライバル〉という存在。

1958年の戦闘機でのテスト飛行の際のムチャな操縦をめぐり(その時だけじゃないか)フランクとホークの確執は根深い・・・。えぐいほど尾を引いてます。ふたりとも不器用なんですね。

それをなだめるジェリー(ドナルド・サザーランド)とタンク(ジェームズ・ガーナー)。そして運命づけられた病という罠・・・。

宇宙への旅はただ使命ではなく、プライベートの、許しの、贖罪の旅となりました。

ジョージ・ルーカス仕込みの宇宙空間。

ロシア(かつてのソ連)の軍事衛星という因子が登場し、一気に深刻なムードになってしまう今作。それだけ感情移入してしまっていますね。

冷戦時代の遺物が浮かぶ宇宙空間。「スペース カウボーイ」での宇宙の表現は、かのジョージ・ルーカスに手法を授かり生み出されたものです。イーストウッド、映画界での経歴が長いだけありなかなかの人脈です。

当時はすごくていねいに、うまくなされた宇宙の表現だったのですが。今だと多少稚拙な部分もあります。一周まわってかなり独特なことに・・・。

大気圏に突入するスペースシャトルや、月などがまるで絵のようでとても非現実なんですね。しかし宇宙って非現実ですから。これらは良しとします。

宇宙のこの現実からの乖離。不気味なハリボテ感・・・。それが観るものに恐ろしさを抱かせます。

宇宙空間での事件を描く際に気づくのが地球との距離感です。地上から見上げる青空の、ほんのすぐ上がもう宇宙なんですね。

そこで事件は起こっているんです。地球にすぐ帰れそうなのに、実際は生きるか死ぬか・・・。ほんのちょっと青空の上に行くのが大変なんですよ。最近だと、ホリエモンさんも苦労してますね。

そしてすぐそこに超危険な軍事衛星がのさばり、地球に向かって落下をつづけているわけです。(キャー。)

まとめ:イーストウッドの描くプロ意識。

この作品は宇宙の表現に苦労した一方で、それ以外はイーストウッドにとってはラクだったといえるかもしれません。

脚本がしっかりしてるし、おもしろい。また揃った役者に力があります。だから娯楽映画としてほぼ成功は見えてます。(イーストウッドの監督としての手腕もすばらしいです。)

だから一歩間違えるとうまく作られすぎて・・・。こういう映画ってかえって陳腐なエピソードのありがちな寄せ集め、75点くらいのシーンだらけになる危険があるんですよね。

バーで若者と喧嘩をしそうになるやり取りや、女性への下ネタ(今だと怒られます)はステレオタイプでベタなんですね。

でもほんとのほんとの今作「スペース カウボーイ」の肝は別のところにあって。単にアナログ時代の老人たちが、今のインテリ若者にデキるところを見せるということではないんです。

そうやって好感度をあげる空虚ではなしに(それでもストーリーは成立しますが)、もう一つ上、裏をいくんですね。

本当の老人らしさとは何か。イーストウッドは今作でこの一線を重要視してましたね。結末とその伏線がちゃんと存在してることがわかります。

真のプロフェッショナルは感動されることに甘んじません。大切なことは偉業を、英雄性を後世に示して感動させることではなく。誰にも見せないでただたんたんとしてることなんです。

この映画は泣きの映画ではなく、そういう真のプロ意識の映画です。「トゥルークライム」と「ブラッド・ワーク」の間にこんな宇宙作品を撮ってたんですね・・・。

映画人クリントイーストウッドのことを知れる本はいくつかありますが・・・。まずはこの一冊から。

コメント

タイトルとURLをコピーしました