2018年に映画「運び屋」が公開されました。主演はクリントイーストウッド。見ないわけにはいかないですね。
「グラントリノ」(08)以来の自身が監督・主演を務めます。まだやるかイーストウッド。いいですね。
おもしろいのがもうこの作品「運び屋」、〈かつての伝説の男ふたたび〉パターンではないんです。新しいことに挑戦するストーリーです。
「グラントリノ」と「運び屋」。
久しぶりのクリントイーストウッド〈監督・主演〉にびっくりです。多くの人が「グラントリノ」以来、もうないだろうと思っていました。
「グラントリノ」自体が〈終わり〉〈けじめ〉のストーリーでした。イーストウッドも死を完全に演じきった、無欠の作品です。だから〈遺作〉と思われてました。
しかし10年の時を経てふたたび〈監督・主演〉を務めます。主演だけなら「人生の特等席」がありましたが。
それにしても88歳で主演というのは間違いなく異例です。しかも「運び屋」は大ヒットしました。
「グラントリノ」との比較はよく言われてて、イーストウッド自身も言及しています。主人公は孤独な老人。しかしウォルト(グラントリノ)は閉じこもり型。アール・ストーン(運び屋)は外づきあい自体は好きなんです。
そして二人とも物語を通して変化していくのは共通していると。イーストウッドは今でも演じられるキャラクターがあれば演じます。今回も「グラントリノ」のときと同様、役者魂に火が付きました。
豪華な俳優を集められるイーストウッド。
「運び屋」は多くの大物俳優が出演しています。「アメリカン・スナイパー」で主演だったブラッドリー・クーパー。この人はイーストウッドと信頼と尊敬で結ばれていると評価されています。
ハンサムで、肉体的な印象です。監督を目指しているんですね。クリントイーストウッドと共鳴しあっています。
ファンが嬉しいのがローレンス・フィッシュバーンが出演していること。「ミスティックリバー」でも今作でも、この人がシーンに登場したときの存在感・どっしり感が素晴らしい。
誰かに似ているけど誰か思い出せない独特の顔。クーパーとともに麻薬取締官側の人間。主人公の運び屋(イーストウッド)を追います。
「ミリオンダラーベイビー」にも出ていたマイケル・ペーニャが再登場します。イーストウッドだからできた豪華な再登場の役者たちです。
ぺーにゃ。
主人公の妻には大物女優のダイアン・ウィースト。娘役にはイーストウッド自身の娘アリソンが出演してます。
どのシーンにもこれら豪華な俳優が登場するので「運び屋」全体が華のある映画になっています。
やりすぎないイーストウッド。
作品全体を通して、クリントイーストウッド監督の性格・抑揚が感じられます。テーマをつかみ脚本を信頼したら、たんたんと必要なことをしていくだけです。選んだ役者やスタッフに対する信頼感が観ている側に伝わってきます。
いえるのは、多くの点でイーストウッドは「やりすぎない」んです。撮影も1カットのみで、撮りなおしが少ないことは有名です。多くの役者がはじめはショックを受けるといいます。
それだけでなく例えば「マディソン郡の橋」では必要以上の官能的なシーンは除去しました。それがいつからか暴力的なシーンも必要最低限になってきています。
ストーリーの中心となるような犯罪や暴力ですら長々と表現したりしません。死や流血も間接的に描かれるようになりましたね。
クリントイーストウッド、今や「許される者」に。
「運び屋」は実話をもとにした作品です。無害に見える元園芸家の老人レオ・シャープが麻薬の運び屋だったという記事が「ニューヨークタイムズ」に掲載されました。
80歳を過ぎた白人の老人がまさかコカインの運び屋をやってるとは思われず、警察と麻薬取締班の目を逃れました。彼をイーストウッドが演じます。
レオ・シャープは事実優秀な園芸家で評価も高く、かつてホワイトハウスに招かれ庭に花を植えたこともあったりします。
それがインターネットにおされて商売の経営がダメになったんですね。そして数奇な運命で、麻薬カルテルに関わってしまうのです。
「デイリリー」という花。この映画ではじめて知りましたが、象徴的な花です。花言葉について調べてるサイトもあります。一日だけ咲いては枯れていく花。
この運命が、主人公のひとときのの成功と没落を描いたこの作品に驚くほどマッチしています。レオ・シャープは気づいていなかったでしょう。
「運び屋」は犯罪映画の面ももっています。しかし今の時代に「運び屋」を見るなら、この一日だけでも「咲く」「花開く」というテーマを尊重するほうが大事なのです。
イーストウッド演じるアールはヨボヨボの白人だから疑われませんでしたが、作中ではむしろ物腰と機知でトラブルを乗り越えます。
黒人やメキシコ系の人たちに対して普通に差別的なことを言います。こういったくだりでもそれほどは咎められません。周りに許されてクリアしていきます。「許される者」ですね。
この倫理バランスがフィクションだからか、現代の寛容性のあらわれか、老人への諦めなのかは未知です。
ラストシーンで主人公アールが刑務所のなかで再び花を育てはじめるシーンが感動的です。
まとめ:衣装担当デボラ・ホッパーの仕掛け。
ブルーレイの特典映像で明かされるのですが、長年衣装を担当するデボラ・ホッパーが今作で用意したイーストウッドの衣装はかつて他の作品でイーストウッド自身が着用したものです。
以前着たものを保管してあるんですね。「グラントリノ」「シークレットサービス」「トゥルークライム」などで着用した服を今作でもう一度着ているので、気づく人もいるはずです。
表紙が渋すぎます。映画人クリントイーストウッドの伝説を知るために読んだ本。
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