アンジェリーナ・ジョリー主演。実話をもとに怖ろしい誘拐事件を映画化【チェンジリング】

イーストウッド映画の風景写真 映画
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養鶏場の画像

クリント・イーストウッド監督作品の中でも、ひたすら暗澹たる空気が漂っているのが「チェンジリング」です。

1920年代のロサンゼルスを舞台に、子供を誘拐された母親の物語を映画化した作品です。意外にもアンジェリーナ・ジョリーが主演を務めています。

評価も高く、多くの話題をさらったこの「チェンジリング」。1人の母親が運命のいたずらにより、途方もない悪夢の渦へ放り込まれました。

「チェンジリング」とは「取り換えられた子供」の意味です。その言葉だけでもう不気味なタイトルです。どうしてこんな語が存在するんでしょうね。

以前「チェンジリング」における母親クリスティンの希望と結末について書きましたが、今回はこの悪夢となった事件も見ていきます。

アンジェリーナ・ジョリー主演。実話をもとに怖ろしい誘拐事件を映画化。

アンジェリーナ・ジョリーは実際の誘拐事件をもとにした映画「チェンジリング」に出演しています。1928年にロサンゼルスで実際に起こった事件です。

この映画はヒューマンドラマとか刑事サスペンスというよりも、ホラー映画じみたダークな出来となってます。

アンジェリーナ・ジョリーは息子を誘拐された母親クリスティンを演じ、彼女のたたかいが描かれます。

しかしアクションヒロインのような彼女のイメージとは違い、運命に翻弄される女性としての繊細な演技が見どころです。

巨匠クリント・イーストウッドがこれを監督しました。ストーリーも撮影もキャスティングも衣装も美術もスキがありません。

ダークさで言えば「ミスティックリバー」と双璧かもしれません。子供の失踪や事件の悲惨さなどの点も共通しています。

スティーブン・キングは恐怖の原因について我々の内部から来るものと、雷のように外からやって来るものとがあると言いました。

まさに「チェンジリング」の恐怖はこの外からやって来るものです。これはどうしようもないもので、すさまじい禍々しさと特殊性を持ったものでした。

主人公をおそった悪夢はホラー映画にも匹敵します。

「チェンジリング」でのアンジェリーナ・ジョリーは、ホラー映画でいう被害者になってしまいます。口を手でおおい、声も出せずに崩れ落ちてしまうヒロインです。

息子の取り違えを認めようとしないロス市警によって、じわりじわりと被害妄想の狂人として扱われます。

味方であるはずの警察の人間が保身のために、こうした理性に反する行動を取るわけです。次第にクリスティンの日常は非現実におかされ、悪夢と化します。

警部や警察の本部長も冷徹で機械的にクリスティンを扱います。そして彼女はついに身柄を拘束され、人間の心をもたない医者の待つ精神病院に入れられます。

そこでは正気の人間でも徐々に狂気へといざなわれるような診察が行われます。また処方されるのは得体のしれない薬であり、残酷な電気ショックの拷問も行われています。

そして「チェンジリング」の悪夢のホラー映画的要素は、この帰ってきた偽物の息子です。この子はいったい誰なのか。

背の高さが数か月前に測った印より縮んでいるのに気づきます。またシャワーのとき、割礼されているのを目にします。

家の中に知らない別人の息子がいて、じっとこちらを見て「ママ」と言ってくる。クリスティンは身の毛がよだち、恐怖におののきます。

もう一つの悪夢、ゴードン・ノースコット事件。

「チェンジリング」にはもう一つ、かつてあった悪夢のような事件が登場します。イーストウッド監督自身、このゴードン・ノースコット事件には衝撃を受けました。

まさに「チェンジリング」の本当の悪夢の中心はこの事件です。かつてカリフォルニアのリヴァーサイド郡にある養鶏場がありました。

ここの経営者のゴードン・スチュアート・ノースコットという男が子供を誘拐し、この養鶏場で拷問と殺人を繰り返していました。

そしてこの男の犯行が「チェンジリング」のクリスティンの息子、ウォルターの失踪と結びつきます。(実際には男は母親と犯行を行っていました。こわ・・・。)

映画の中でこのゴードン・ノースコットの罪は暴かれます。カナダへの逃亡から逮捕、裁判、死刑まで現実どおりに描かれます。

ロス市警の不正と、このゴードン・ノースコットの事件とが結びついて「チェンジリング」の悲劇は起こっていました。

映画の中での養鶏場のシーン、非常にトラウマになるシーンです。ここだけホラー映画の手法で撮影してあります。

(イーストウッド作品での子供の誘拐事件と死というと、「J・エドガー」のリンドバーグ愛児誘拐事件を思い出します。)

物語ではふとしたことからヤバラ刑事がこの養鶏場に関わる少年の取り調べを行い、そこから次第に事件の真相が明らかになります。

明かされる大量殺人の秘密と、そこから本物のウォルターの存在までドミノ倒しでつながっていく様は見どころです。

少年を取り調べたこのヤバラ刑事だけが、ウォルターの捜索に尽力してくれたのでした。

まとめ:映画史に強烈なインパクトを残した「チェンジリング」。

「チェンジリング」のインパクトは大きいです。そしてそれは、この物語が現実にあったことだからです。

(「チェンジリング」には副題として「A TRUE STORY」と記されています。)

これ以降のイーストウッド監督の作品はより重厚で、より大人向けのものとなります。ベストセラー小説の映画化から、実在した人物を描く映画へと舵をきりました。

カメ
カメ

面舵いっぱいです。

クリスティンはこれ以降のたとえばマンデラ大統領、クリス・カイル、サリー機長のような特別な力は持っていないんですね。

でも彼女のくぐり抜けた悪夢と出来上がった映画全体の緊張感は、イーストウッド監督の作風をより洗練されたものに変えていきます。

「チェンジリング」以降、クリント・イーストウッドの作品はより複雑で現代的な悩みを表現するようになっていきます。

現代人の悩みを表現します。大人向けの映画を撮るクリント・イーストウッド監督についての評論。

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