クリント・イーストウッド監督が人気ミュージカルを映画化しました。「ジャージー・ボーイズ」です。
2014年公開。2014年は次作「アメリカン・スナイパー」も公開されてます。とどまること知らぬ制作意欲です。(しかも映画の世界観も全然ちがう。)
1960年代にアメリカで人気をほこったフォー・シーズンズというポップスグループがありました。彼ら(メンバー4人)の伝記映画となります。
厳密にはミュージカル映画ではなくてですね。登場する役者が急にセリフを歌いだしたりはしません。
フォー・シーズンズの4人。
フォー・シーズンズのメンバーは4人です。
・フランキー・ヴァリ(リードヴォーカル)
・トミー・デヴィート(ギター、バリトンヴォーカル)
・ニック・マッシ(ベース、バスヴォーカル)
・ボブ・ゴーディオ(キーボード、テナーヴォーカル)
以上の4人なんですが。ロックバンドのようで、全員で歌ってハモるコーラス隊みたいな感じのグループです。(ちょっと踊ったりもします。)
フランキー・ヴァリ、ニック・マッシ、ボブ・ゴーディオの3人は元のミュージカルの役者がそのまま映画でも役を演じています。
トミー・デヴィート役だけは映画化にあたって新たにキャスティングされたんです。これはイーストウッド監督の考えるところがありました。
トミーは映画の中でとくに映画っぽい役目を果たします。ストーリー上の役回りも他の3人とは違っています。
3人と別行動のシーンもあります。舞台を映画化する際の差別化のために、トミー役だけ新たにキャスティングしたのかもしれません。
ニュージャージー出身の悪童たち。
「ジャージー・ボーイズ」というタイトルは、メンバー全員がニュージャージー州の出身であることに由来します。
最後に加入したボブは別だけど、ほかの3人はもともと不良少年でした。作中でもデビュー前に、窃盗で逮捕されたエピソードが描かれています。
またトミーはマフィアのボス(デカルロ)ともつながりがありました。トミーとニックは何度も逮捕→出所を繰り返してるんです。刑務官とは顔なじみになってます。
こういう世界的なグループが悪童たちだった事実も、イーストウッド監督の琴線に触れたようです。バンドの成功と苦しみだけでないこういう背景が、イーストウッド映画の世界観とリンクします。
でも彼らははやくこの状況から抜け出したかった。音楽の才能で成功したかったんです。で、彼らにはフランキーという唯一無二の歌声をもつ弟分がいました。
天性の歌声と魅力的な曲で成功をつかむ。
フランキーの声が独特で、この声でフォー・シーズンズは成功したといえます。じつはこの声、苦手という人もいます。独特すぎて受け付けないというか。
「君の瞳に恋してる」などは多くカバーされてますが、カバーバージョンのほうが好きという人もいます。というかカバーで知られてると思います。
ただ当時のアメリカではこの声が評価されました。男の客も女の客もフランキーの声に聴き惚れていました。
ボブ・ゴーディオの加入時も、この声のために俺は曲をつくりたいと彼は思ったんです。キーボードのボブの加入がバンドの成功を確実にしました。
ボブはすごい才能の作曲家で、バンドに数多くの名曲をつくりました。実は調べてみると、ボブ加入まではカバー曲がほとんどだったんです。
映画ではボブのスマートさというか、如才なさとハンサムぶりにはじめトミーが拒否反応を起こしちゃうんですね。
それでもボブが次作の曲を弾き始めて、メンバーたちがおのずとジャムを始めるのはいいですね。相性がいいことはすぐわかりました。
やはりバンドというのは歌えるメンバーと、曲を書けるメンバーが強くなるのは当然です。成功の中でフランキーとボブは個人で契約を結びます。
ボブは特に経済面でも頭がよかった。でもこのあたりから徐々にメンバー間に距離が出来てきたのを感じました。トミーの素行の悪さもありますが。
デカルロ氏とノーマン氏、嫌いじゃない。
裏社会のボス、デカルロ氏が優しくていいです。明らかにマフィアのボスなのに、そうと感じられないいいおじさん。上品です。
大物俳優クリストファー・ウォーケンが演じています。ちなみに「デッド・ゾーン」のジョン・スミスってこの人だったんですね。
本来悪人といえそうな借金取りの男、ノーマンも悪い感じはそれほど感じられません。60年代がそういう時代だったんでしょうか。デカルロもノーマンも常識人なんです。
こういうのもイーストウッド映画的抑揚というか。デカルロとノーマンが出てくる筋好きなんです。この二人も結局フランキーの歌声をかってるんですね。
実際この映画で観客が一番イラってくるのはトミーに対してです。そしてトミーのよろしくないふるまいが、バンドを崩壊させる方へつながります。
こいつは洗面所で小便をするんだ。洗面所でだぞ!
そしてこの崩壊からの回復が「ジャージー・ボーイズ」のテーマです。ここをイーストウッド監督は丁寧に描きました。
まとめ:見ごたえあるグランドフィナーレ。
エンディングで大サービスがあります。キャストみんなで通りをダンスしていくパフォーマンス、グランドフィナーレがあるんです。
実はここが映画の一番の見どころかもしれません。「ジャージー・ボーイズ」は楽しい映画なんです。だから最後こういう終わりになった。
練習時間が限られていたのに、普段踊らない役者も素晴らしいダンス・ステップを見せます。最後、止まったポーズで主要メンバーが映るのが妙にジワリときていいです。
イーストウッドもこのグランドフィナーレに混じるよう誘われましたが断りました。「出る幕じゃない(笑)」と。目立ちたがり屋の監督なら出てたかもしれません。
伝説の映画人クリント・イーストウッドのことを書いた本。
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