「近畿地方のある場所について」ついに読み終わりに至ります。
なかなか興味をそそられる作品であった。いくつものエピソードを通じて怪異の真実に迫っていくストーリー。
ひとつひとつのエピソードに工夫が凝らしてあって、飽きずに楽しめたし、読むのをやめることができなかったよな。
うむ。実はちょびちょび10回くらいかけてレビューしたかったんだが、結局我慢できずに最後まで読んでしまったぞ。今回で終わりである。
「近畿地方のある場所について」読破。
読破した今はこの作品についてネットで調べて色々な考察や評判、情報を見ております。
書籍化されるのを待ってこの作品に触れたから、ブームに対してやや後追いになったようである。
この作品、思うに何層かの読み方があります。
ただひとつひとつのエピソードの怖いムードを味わうという浅い読み方であるが、自分はこれだったのである。
たぶん書籍で読むとこの読み方が多いと思われる。
一気に読めてしまうので振り返らないからな。
もう一つ、各々のエピソードを振り返り推理・検証していくという深い読み方もあるのだろう。本来投稿されていたものを読んでいた人はこちらの読み方をしてた人も多いんじゃなかろうか。
ネットで見ると完結前の段階で自分なりの考察をまとめている人も見かけるしなぁ。
この考察や推理のためにはエピソードを振り返って時間系列を整理し、細かい出来事のリンクを見つけていかなければならないようだな。
ただ言わせてもらえばこの作品中に事件を検証し考察する筋がある(「私」と「小沢くん」の筋のこと)から、そうである以上考察することはこの本の楽しみを弱めるという気もするんだよな。
筆者の背筋氏の思惑は解らないけどなぁ。
最後の感想。
ただ一つ、確かに最後のあたりで、背筋氏が読み手に対して明確に野心的なトリックを使ってはいるのだ。
ネタバレなので言わないが、たしかに野心が感じられる仕掛けがあった。
まあ古典的な手法なんだけど、このエピソード群を一つにまとめて円環をなすにはこのやり方しかなかったかもしれないなぁ。
この「近畿地方のある場所について」。全体的な感想としてはどうだろうか。
むむ。実はけっこう7割くらい読み進めてきたあたりで、期待するカタルシスのある結末ではないんだろうなぁという感じはしていた。
怪異が怪異のまま終わるんだろうな、という感じがもうしてしまっていたからなぁ。まあ読者がどちらの結末を望むのかにもよるだろうが。
宗教やスピリチュアル的な要素を出すにしても、やはり超自然的な怖さを信じさせるにはやや弱い、という感じは否めない。
その点、ひとつひとつのエピソードの怖さの完成度はすごかった。この作者のストーリーテリング能力はエピソードの細部の完成度によりでてるんだよなぁ。
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