スティーヴン・キング短編集「夏の雷鳴」から「鉄壁ビリー」である。まったく読むのに苦労しない作品である。
野球をテーマとしており、ホラーなところは全くない。何とかして犯罪的要素をホラーに含めようとすることはしたくないんだよなぁ。
序文でキング自身野球のお話と言っているが、まさしくそうであった。大昔の話であるが。1950年代くらいの話だろうな。
タイタンズという名前のチームが出てくるが、これはおそらく架空のチームなんだろうなぁ。検索をかけてみたが、フットボールのチーム名としてしかかからなかったぞ。
でこの、タイタンズにかつてコーチとして所属していた男(今は老人)グラニー。この男がキングに対して昔語りをするように、かつて存在した一人の野球選手のことが語られる。
短編野球小説「鉄壁ビリー」。
自分はこの、好感の持てる語り手による諦念あふれる語りというのが大好きなのだが。キングのこの手の性格人物による過去の事件の告白が大好きなんだよねぇ。
一理ある。この作品でも、語り手グラニーの心地よい語り口を楽しめる。ただそこに出てくるのは野球人生で出会う多くの厳しさや痛みなんだよな。
うむ。ケガや年齢による限界。事件を起こしてしまったり。確かに野球はまったくしないけど、スポーツ選手には運というのがなにかと関わってくるんだなぁ。
とくに今作では、ホームベースでの際どいクロスプレーが選手たちの運命を左右するということが切実に描かれておる。
もう一つ、いわゆる審判に気に入られているとかいないとか、という要素もあるな。作品の冒頭から、アンパイアの判定というのが試合や選手の運命を決めてしまいかねないことが言及されている。
にしても、くだした判定が間違っていた時の、この審判の非を絶対認めない態度はなんなのかこれ。
これは今も昔も、日本の審判もアメリカの審判も変わらないんだよなぁ。どうしても白井を思い出してしまうが。
野球漫画を読んでるみたいであった。
この短編、キングらしさが全開なんだよなぁ。
うむ。こうしたホラー要素のないストーリーでも、語り口だけでキング作品だとわかるのはすごいな。
野球小説(?)というジャンルがたぶんないから、自分は今作を野球漫画として読んだ感じがするぞぉ。あだち充これ。
あれ思い出すなぁ。かわぐちかいじが前にたしか「バッテリー」という野球漫画かいてたんだが、アメリカのチームと対戦するシーンも描かれておった。
今大谷が話題で、メジャーのニュースもよく目にしているからか、作中のダブルヘッダーというのもどういうものかわかったな、これ。
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