創元推理文庫のチェスタトンの物語集「裏切りの塔」を読み進めていくぞ。
チェスタトン「煙の庭」。
次は「煙の庭」。
この、女流詩人の会話相手として女性が招かれる、といった文化が独特だな。
ふむ。そして物語全体を通して霧がかかったような印象を受けるなぁ。灰色の、湿っぽい感じ。
部分部分を読んでいるとけっこう色彩鮮やかな描写なんだがな。まるで幼年期の世界のみずみずしい印象である。詩情これ。
これもミステリものであり、犯罪をめぐる推理モノである。この作品集はこういう系列のものとして読んでいいのだろうか。
霧がかかったような印象については、それが結局真相のカギにもなっておった。
「高慢の樹」に比べたら小品だが、十分佳作なんだよなぁ。
チェスタトン「剣の五」。
ちょっと変わり種。フランスを舞台にした作品である。
「剣の五」って、タイトルこれ。
おおこのストーリー、なんか読んだ記憶があったんだが。
別の短編集にも収録されていたんかな?
ただ、そうとう最後まで読み進めていってようやく気づいたのである。
イギリス人とフランス人との性質の違い、決闘というものの正当性などがテーマであるが、逆説逆説逆説である。
チェスタトンの逆説は気持ちがいいんだよなぁ。イギリス人のチェスタトンが、フランス人に対してかなり公正に、判断力をもって描いているのが好印象である。
物語の筋も凝ってるし、トリックと心理の混ざり方も複雑なのに、実は定式があるよな。チェスタトンの型がある。
水戸黄門的なわかり易さときっぱりとした結末がある。
あと感動させるよな。
おお。チェスタトンはホロっとさせよるでな。
この人の中には確固とした倫理があるんよな。それで最後は人の温かい面、高貴な面を優先する。
人間の感情、情緒はたくさんあるが、高貴な心情に感動して泣ける、というのでいえば実はチェスタトンの作品こそそれなのかもしれない。
「剣の五」もおすすめである。
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