主人公フランクは1963年のケネディ大統領の暗殺を阻止できませんでした。事件の瞬間シークレットサービスとしてケネディの傍にいたのに・・・。1発目の銃声の後、どうして身を呈して大統領を守ることができなかったのか。
今は齢をとってシークレットサービスの第一線から退いているフランク。とうてい身体をはった警護ができる齢ではありません。
いきなりサスペンス超大作「ザ シークレットサービス」。
今作「ザ・シークレットサービス」(93年製作)でイーストウッド演じるフランク。彼はシークレットサービスを長年務めてきたベテランです。ケネディ大統領暗殺に居合わせたのに暗殺を防げなかったことを強く悔やんでいます。すごい過去ですね。
このことが長年、彼の人生に暗い影を落としてきました。自責の念にかられて酒びたりになり、奥さんと子供も出て行っちゃいました・・・で今に至ります。
そこにこの度、大統領暗殺を目論んでいるらしき男の情報が入ってきます・・・。これもまた不審者に対する周囲の過敏な憶測かも知れませんでした。
(作中で、大統領暗殺脅迫は年1400件以上あると言及されます。ちゃんとこれらすべてにシークレットサービスは対応してるんですね。)
しかし「ブラッド・ワーク」のようにフランク自身の運命をまきこんで、本当にブースと名乗る暗殺者が大統領暗殺を企てます。
この「ザ・シークレットサービス」はクリントイーストウッドは監督を務めず、出演だけの作品です。出演だけのイーストウッドものの中では最良のものの一つと言われています。
サスペンス映画ですが批評家からも評価が高く、1994年のアカデミー賞でいくつもの部門にノミネートされました。(受賞はほとんど「シンドラーのリスト」にもっていかれました。)
舞台が大統領、政治、選挙などスケールが大きくいかにも豪華な作品です。すごい製作費がかかるやつです。でも大勢の観衆はコンピュータ技術でかさまししてます。
リリーを演じたレネ・ルッソが美人だった件。
大統領を暗殺するという電話をかけてくる執拗な男ブースと、シークレットサービスとの闘い。非常にサスペンスフルにストーリーは進みます。
若い相棒が殺されます。電話の逆探知も数え切れぬ失敗。意見の一致しない上司。フランクは苛立ち、必死になります。それとも自分のやり方が間違っているのか。
ケネディ暗殺を防げなかったトラウマがあります。心が休まるのは若く美しい女性の同僚リリーとの時間です。
今作のヒロイン役リリーを、レネ・ルッソという女優さんが演じます。このひとかなり美人です。イーストウッドが出演してきた映画に登場してきた女性の中で一番の美人です。
仕事がバリバリできる女性です。ヒロイン役とはいえ主人公フランクに弱いところを見せたり、守ってもらったりしません。かっこいいし美人です。
ふつうにファンになります。すごく独立・自立した魅力的な女性です。美人なんですよね。
暗殺者を演じたジョン・マルコビッチを高評価。
今作の監督はウォルフガング・ペーターゼンという人ですが、監督が違うとかえってイーストウッド監督の世界観、手法と比較できます。監督ごとに選択するストーリーの好みもありますね。
両者とも「仕事人」、完全たるプロのつくる映画という作品をつくります。ただイーストウッド監督のほうがより感覚的ですね。
このペーターゼン監督は観客に狙い通りの感情を伝えることを念頭に置くタイプといいますか。
イーストウッド監督は新しいテーマにチャレンジすること、新たな手法を試してみることが好きです。観客の反応と評価はそれほど意識してないですね。
悪役ブースを演じるのはジョン・マルコビッチという人。かなりあくが強い個性派俳優で、じつは評価が高い役者さんです。
「ケレンを好む」と作中で言われる、そんなキャラクターを演じます。のちのイーストウッド監督「チェンジリング」にて牧師役で登場したときも強烈な存在感でした。
マルコビッチはその風貌から、サイコな殺人犯を演じ切るためにキャスティングされた意味合いもあります。カリカチュア的というんですかね。
ただイーストウッド監督ならここまでわかり易いキャスティングはせず、もう少し微妙なところをつくでしょう。「チェンジリング」の牧師役などはすごい絶妙なキャスティングでした。
大統領を狙う者と、それを防ぐ者。両者の間で知的な戦いと肉体的な戦いの両方が展開されます。印象的なシーンがいくつもあります。
推理と情報収集もあれば、窓をぶち破る家宅捜索、ビルからビルへジャンプしての銃撃戦もあります。90年代の作品ですが捜査も変装も古典的なものを、現代につながるようリアルにアップロードしてあります。
ストーリーテリングが良すぎてそう感じませんが、主役・悪役の性格の造形も優秀です。
まとめ:ピアノをたしなむフランク=イーストウッド。
イーストウッドのスーツ姿がかっこいいです。やっぱりイーストウッドはスタイルがいいです。背が高く、立ち方がスマートです。齢をとってもガッシリしてますね。ハリウッド一、立ち姿がかっこいい男です。
のちのインタビューでクリントイーストウッドは主人公フランクがピアノをたしなんだりして、単にかつての仕事一途な役とは違っていることを強調しています。
今のイーストウッド作品の登場人物は、アーティスト的な性格をみせることが増えてるんですね。「ザ シークレットサービス」はこうした個性を産み出すきっかけになったのです。
フランクはマイルス・デイヴィスのジャズを聴き、ピアノをたしなみます。実際のクリントイーストウッド像に近いです。イーストウッドは作曲もしますからね。
ジャズと西部劇こそアメリカが純粋に生み出した文化であるといったイーストウッド。イーストウッドを知るにはジャズも聴かなきゃです。
表紙の顔が渋すぎます。映画人クリントイーストウッドを知るために読んだ本。
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