あの「レクター博士」シリーズってね。ハンニバル・レクター博士シリーズね。数少ない、シリーズ通して観たやつなんよ。
(※「レクター博士」シリーズは「羊たちの沈黙」から始まった人気のホラー映画シリーズ。アンソニー・ホプキンス主演で有名。)
「ロッキー」とか「ターミネーター」とかも、まあシリーズで観たけど、何作目かからは惰性で観てるっていうか。
でもレクター博士のやつはシリーズ通してずっと面白かったし、観てる間にもう続編が観たくなってたんよ。だから久々の当たり映画だった。
レクター博士が好き。
あれ、レクター博士ってね、少し可愛いんよ。殺人鬼なんだけど、可愛いときあるよね。
たぶんこの人身長がそんなに大きくないんよね。アンソニー・ホプキンスって。あと頭ハゲてるやんか。
で主人公のクラリスに捜査では協力してくれるから、レクターが極悪人ってこと失念しちゃうんよ。
でもこの人が作品の中で一番ヤバいのは確かで、これが絶対じゃないとシリーズのパワーバランスの設定が崩れちゃうんだけど。
どの作品(「羊たちの沈黙」「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」)にもひとりサイコ野郎が出てくるけど、レクターは必ずそいつらを上回っとるんよ。
だから必ずレクターによる殺人、それもムチャクチャグロい残酷な奴とかは必ず描かれとるんよ。で「あ、やっぱこの人悪人やんか!」って。
そういうこと抜きでも、シーンに入って一番魅力があるのもレクター博士が登場してるシーンだしね。
自分はあそこ好きなんよ。「レッド・ドラゴン」の最初の、料理の本で自分が殺人を犯してることが刑事にばれてザスッって後ろから刺すとこのシーン。
あそこよくできてるよね。
レクターシリーズでどれが一番好き?
これってさ、評価でいうとどれがいちばん面白いの?
「羊たちの沈黙」が一番面白い。
それはそうなんよ。これがあるからシリーズの続きが観たくなるから。
「ハンニバル」と「レッド・ドラゴン」は、評価はまあ下がるんだけど全然楽しめる映画。
「羊たち」がSで「ハンニバル」と「レッド・ドラゴン」はAとBの間くらいなのかな。この2作は完全に好みの問題で優劣はないかなって感じ。ちなみに自分はそれほどの映画通ではないんだけど。
ホラーっていうけどそんなに怖くないんよね。
直接性を避けてるよね。「におわせ」で終わってる感じ。芸術作品として撮ってるやんね。「ハンニバル」とか映像美すごい印象がある。
だからホラーでもいきなり「ウワー!!」とかじゃないんよ。「うぅらゾンビー!!」にはならない。
来るぞ、来るぞ・・・、どん!って感じ。
「羊たちの沈黙」はホラー映画で初めてアカデミー賞獲っとるんよ。「ゾンビー!」系の映画だと獲れてないやん。
ただ最後らへんでクラリスが、犯人の住処に単身乗り込んでいくあの辺。真っ暗のなか追い詰め、追い詰められてっていうシーンは「ゾンビー!」系だったけど。
あそこ少し残念なんよね。で、捕まってた女の人もあんまり好きなキャラクターじゃないんよ。
自分「羊たちの沈黙」は先に原作の小説のほうも読んでたんだけど、小説がすごい良かったんだよねー。
で、映画の「羊たちの沈黙」はちょっとこの、小説っぽい世界観があるんよ。雰囲気が、ちゃんと文学っぽいの。
アンソニー・ホプキンスがイギリス人っていうのがあるのかも。イギリスって〈小説〉とか〈文学〉って感じするじゃん。
ジョディ・フォスターとかクロフォード役の人も、なんか貴族っぽい顔立ちしとんのよね。
1991年の作品だから、今見ると古さが逆にうまく働いてるのかもだけど。
クラリス=ジョディ・フォスターの可愛さよ。
ジョディ・フォスターが可愛いんよねー。この人って、こんな可愛いんか。
あの最初の、グレーのトレーナーに汗じみつけたままクロフォードの話聴いてるとことかさあ、超可愛くない?
鼻先の軟骨がこう2つに割れてるのも、キレイやんね。
この「羊たちの沈黙」の、クラリスとクロフォードのコンビが好きだったんよ。
このクロフォード役の人もいいよね。
「レッド・ドラゴン」でクロフォード役の人が代わるんやけど、あんまりこの人(ハーヴェイ・カイテル」)はね、良くなかった。良くないというよりか、なんか普通なんよ。
「羊たちの沈黙」でレクター博士がクラリスに、クロフォードがきみ(クラリス)とエッチしたがってるみたいなことをいうんだけど。
これも、スコット・グレン(「羊たちの沈黙」)のほうのクロフォードなら年いってるけど男前で、いい気がしたんよ。
「羊たちの沈黙」が続編に比べて優れている要素って、脇役も不気味なんよね。
メインキャラのレクター博士以外の登場人物も、どこか何考えてるかわからない、不気味なんよ。あの看護師の黒人のバーニーだって、裏でなんかたくらんでそうな感じ最初したもんね。
だから「羊たちの沈黙」がシリーズの他の作品よりか重厚に感じられるのはこの、だれもかれもが腹に一物もってるようなはっきりしないところなんよ。
この感覚はそれ以降の「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」には全く無くなっちゃって。メインキャラ以外の人はみんな表面的な、見たまんまの人。
もともと「羊たちの沈黙」は「子供にとっての大人の世界」みたいな、壁が感じられるテーマだったんよ。だからクラリス(これが子供ね)からは、はじめ周りがみんなどこか不可解な、壁を感じる人物造形にしてあったんよね・・・。
だから「羊たちの沈黙」しか勝たん。
一方で一作目「羊たちの沈黙」って謎の安心感があって。たぶんあれだけのキャストが用意できたから醸し出されてるんだけど。
あの誰も知らない秘密の部屋、空間で自分だけが真実を、秘密の真相を知れるっていうのがいいよね。クラリスはまだ訓練生の立場だけど、FBIの上司より秘密をつかめる立場なわけ。
クラリスはレクター博士に気に入られてるから、このクラリスの安心感が映画自体の安心感なのかも。ホラー映画だけど主人公が物理的に怖がらせられる状況ってあんまり無いからね。
けっこう一番怖いシーンって、シーンっていうかあれ画なんだけど、レクター博士があのマスク着けられてる顔が怖くない?
移送されるときに、顔の下半分をこうマスクで拘束されるやん。あのマスクが絵的に怖いんよ。
口んとこにこう、爪楊枝みたいな棒?あるよね。
結構あのマスク込みのレクター博士の姿がシリーズのアイコンになってるよね。あの姿は強烈ですよ。あれってすごい限られたシーンだけなんだけどね。
アイコンだったらこの「羊たちの沈黙」のパッケージが有名な、ジョディ・フォスターの口のとこに蛾がかぶさってるあの絵あるじゃん。
あれ考えたひとも天才やと思わん?すごいセンス。色合いとか、ジョディ・フォスターのこの表情とか、蛾の位置ももう完璧なんよ。これ以上ないってくらいに。
これだってデザイナーの人がやってるんだろうけど、シリーズのイメージを造るのにすごい役立ってるよね。解りやすいホラーにしないで、なのにそんじょのホラーより不気味っていう。
実際あんなシーンないもんね。でもすごいあれが暗示が効いてて。「羊たちの沈黙」が突出してるんて、この〈蛾〉のくだりとか、クラリスの告白する羊の話とか、本筋とはちょっとずれた要素がすごいいい味醸してるんよ。
こういうのってよく思いつくよね。トマス・ハリスって作家がすごいのかな。でもこの人超寡作で、スティーブン・キングがそれをちょっと批判してたけど。
でもとくに日本人って〈蛾〉にはなんかクジャクヤママユのトラウマが、学校で習って以来あるじゃん。
何それ。
小学校か中学校の国語の教科書に載ってたんよ、オチで蛾をつぶす話。あれで〈蛾〉が嫌になるんよね。
蛾ってもともとあんま好きーっていう対象じゃないでしょ。
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