「ダーティハリー」(1作目のことです)のブルーレイで特典映像を見てたらシュワルツェネッガー(以下、アーノルド)がコメントしてたので内容を紹介します。
アーノルドは・・・。
まずアーノルドはクリント・イーストウッドが自らに与えてくれたインスピレーションについて言います。
「アメリカにやってきて、クリント・イーストウッド、ジョン・ウェイン、カーク・ダグラス、この3人が憧れであり、目標になってくれた」
「実は「ダーティハリー」以前の西部劇の頃からイーストウッドのファンであり、イーストウッドに影響を受けたことがアメリカに来る目的になった」
「そのイーストウッドが「ダーティハリー」で全く新しいアクション映画をつくり上げ、そこでは演じ方、役柄、セリフ、全てが印象的で、こういった風に自分もやってみたいということで、アクション映画にチャレンジした」
「そして「ターミネーター」「コマンドー」「レッドブル」などが生まれた」
なるほど。
次にイーストウッドが「ダーティハリー」で、新しい基準をつくった、ということについてさらに語るアーノルド。
「それまでにあったテレビドラマなどでのいわゆる刑事像、いわゆる興奮して怒鳴ったりするだけの刑事の型を演じるのではなく、多面的に演じて見せた」
「ハリーは決して怒鳴ったりせず、物静かに話す。静かにハンバーガーを食べ銃を抜いて自分の仕事をする。交渉したり取引したりするときも激高しない」
「抑えた演技でユーモラスにセリフを言うから、そのおかげで「ダーティハリー」シリーズにはコメディ映画のように笑えるシーンもある」
「しかし笑いのあとにはシリアスなハリーを演じる。この多面的なヒーロー像をイーストウッドは生み出した。これがアクション映画の新基準になった」
「ダーティハリー」を再び見る。
「ダーティハリー」(「ダーティーハリー」だと思ってたけど正式には間の伸ばし棒「ー」は無いようです。)
実は久しぶりに、それこそ10年ぶりくらいに観ましたが、前はとにかく面白かった記憶があったんだけど、今回観たら、あれ、それほどか?と。
一瞬そう思ったんだけど、これは先入観があったからみたいで。やっぱりこの映画には傑作なのでした。
この「ダーティハリー」の1作目。意外と一筋縄ではいかないというか、そもそも久しぶりに観てイマイチと感じたのは、最近のイーストウッドの監督した現代劇を見たうえであらためて「ダーティハリー」を見ようと思ったときに、だいぶ昔の映画だし、大衆的なヒット作だったから軽く楽しめるかな、と思ってたら、意外に渋かったんですね、この映画。
シリアスでもないし、いわゆるB級映画と呼ばれる安っぽさはあるんだけど、めちゃくちゃ渋いです。で、名作とかいう評価以前にカッコいいです。
この第1作目(製作時は2作目以降もつくられるシリーズものになるとは考えられてなかった)は、いわゆる加害者の権利というか、ミランダ警告という容疑者を逮捕する際に読み上げなければならない決まりがあって(「あなたには黙秘権がある云々・・・」というやつ)、それを主人公の刑事ハリーがしなかったことがストーリーに大きく関わってきます。
これが犯人の残虐性や、ハリーのたしかに乱暴な捜査とあいまって、当時は観客に問題提起をするような作品になってしまったんですね。
イーストウッドのアクション映画を楽しもうと思って観ると、わかり易い感動やカタルシスはないし、ラストもさびしい終わり方です。このあたりが、渋い映画だなと感じたのかも。
B級映画の古典となった「ダーティハリー」。
ストーリーの中で、警察側の人間が話し合う場面が3回か、4回くらいあるんです。それは犯人スコルピオの要求に対して、市長を交えて対策を考えてるんですが、ここにハリーも呼ばれるんです。
この場面がどれもいいんですよね。正直イーストウッド以外はあまり知られていない役者さんだと思うんですが。でもアメリカ人じゃない自分が一回見ただけでも、この人たちの立ち位置とか、犯人の要求に対してどう出るべきかという意見とか、あとハリーに対してどう考えているか、というのが繊細に明確に描かれています。役者さんの演技が上手いんですね。
ハリーの相棒となる若手のチコとの関係性も、はじめはそっけなかったのが徐々に信頼しあっていく過程があって、こういった人間模様もすごいしっかりあったんですね。
これらは今思うとベタな設定、つまりハリーの乱暴な捜査を諫めもするが、手際を買ってもいる上司だとか、助け合うことで徐々に仲良くなっていくコンビだとか、ベタかもですが、すごいそれがはっきり分かりやすく、最低限の設定で描かれていて、古典的。
わかり易すぎて、微妙な深みに欠ける、というのがだからB級映画、と評価される原因かもしれないですが、すごい最小限の情報と役者さんの演技力だけで的確に伝わります。だからこそ「ダーティハリー」の評価の素晴らしさはここだと思います。
製作陣がこの映画ではこういうことを、こういうテーマを伝えるのが目的だ、そしてただそれをしっかりと伝えた、という手際の良さに尽きます。
また観ることになると思います。
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