英雄的行為をした3人を俳優ではなく本人が演じた、ということが話題になった作品ですね。
舞台は2015年に海外で起きたテロ事件。高速国際鉄道「タリス」という列車で起きた無差別テロ事件です。正確には、それを未然に防いだ、ということですが。
映画の公開は2017年。「ハドソン川の奇跡」の次で、「運び屋」の前の作品です。
低評価だったのは・・・
この作品は当時映画館で観て、このたびあらためて見なおしました。
いくつかまあ、言っておくと。
この作品は、傑作であるということです。あえてこう言うのは、イーストウッド映画にしては割と低い評価もされているからで、これに対し自分なりに弁護しておきたいのです。
まず、本国アメリカでの評価が低いのは、主役3人をまあ素人が演じているので、どうしても演技はぎこちなくなるだろうから、その点でマイナスだったのだと思います。
日本人が字幕や吹き替えで観る分には、たとえばセリフが棒読みだったりしてもわからないので、気にはならないですね。
あと、これはある程度仕方のないことだと思いますが、
今じゃどうしたって予告編というものがあり、またイーストウッドの新作で、実際にあった事件を本人が演じる、ということは前もって大々的に知られているわけだけど。
この作品にとっては、そういう特徴がいわば見せ場というか「売り」なので、それが事前に観客に知られてしまってるのはまあ不利だと思います。
あと、意外に小品という印象です。映画自体それほど長くないです。「ハドソン川の奇跡」も大事件を扱ってる割に意外とコンパクトな印象がありましたね。
だから当時はしばらくこれがイーストウッドのモードなのかな、と思ったりもしたのですが、次の「運び屋」はやっぱり長い、大作でした。
思うに「ハドソン川の奇跡」とこの「15時17分、パリ行き」は、事件そのものよりも、それを未然に防いだというお話なので、それほど広がりが出なかったのかなと思います。
3人の英雄
この3人の名前は、
スペンサー・ストーン
アレク・スカラトス
アンソニー・サドラー
3人で力を合わせてテロを阻止したんだけど、印象としては一番目立ってたのはやっぱりスペンサーかな、と思います。
映画の予告編でも銃を構えた犯人に向かってスペンサーが走っていくシーンは印象的で、この映画一番の華があるシーンかと。
アレクは武器・銃器に詳しいです。犯人が取り押さえられてるときに銃器や弾丸を回収していましたね。
アンソニーは黒人で、彼は他の2人と違い軍人じゃなく学生なので、事件の際は阻止する2人を手助けした感じでしたね。
自分が思うところだと、この作品の作り手の立場としてどういうところを今作の特色だと、言うとすると、
この3人が前評判というか、事件を阻止した英雄たちという世間の先入観に対して、実は意外と普通のひとだったんだよ、ということなんでしょう。
作品の前情報だけだと、彼らはバリバリの優秀な軍人というイメージがあります。しかし実際は落ちこぼれ気味の戦争オタク、という感じなんですね。
だから映画の大部分ではそういう、彼らの落ちこぼれ具合が描かれています。それに事件当時彼らはかなり若いです。アンソニーは学生ですし。
子供の頃からの友達同士で、思い出作りとしてヨーロッパ旅行にきて、事件に遭遇。みんなラフな格好で、アレクなんかはサッカーのユニフォームみたいなのを着てます。
この映画は出来る限り実際の事件を忠実に再現しているので、事件のときもこの服を着ていたのでしょう。
自分たちを演じる
雑誌「スクリーン」のイーストウッドアーカイブでこの作品の紹介がされていました。
イーストウッドがこの主人公3人をそれぞれ本人が演じるということ、この起用方法について述べたのですが、
「彼らの顔はとてもユニークに思え、彼ら自身に演じてもらうことは面白い試みなのではと思いました。この挑戦が勇敢なのか無謀なのかは結果次第でしょうね(笑)」
ということです。
なるほど。たしかに自分もスペンサーはユニークというか、役者とはまた違った独特の顔立ちだと思います。アレクとアンソニーは役者にいそうかも?
本当はもともと役者を使う予定で、オーディションもされていたのです。ただイーストウッドが3人を見るたびに、「いい顔だ」と考えていて、結局自分たちで演じてみないか?と提案したらしいです。
それまでは3人は、自分たちの事が映画化されるとなって、周りからも「おい、だれがお前を演じるんだ?」みたいなこと言われていました。ありそうですね。
3人の個性が光る
今作にはいくつもの奇跡があり、それは実際の事件だけじゃなく、映画自体もそうでした。3人はただ行動力と能力があっただけではありません。
映画の過程を楽しくしているのは、実際にこの3人が性格的にユニークだからで、個性もバラバラ。当人ら自身、なぜ友達同士なのかわからないけど仲良しなんだ(笑)と述べてたりします。
スペンサーは勇敢、アレクは真面目、アンソニーは陽気。こうした個性をイーストウッドは気に入りました。
製作中の3人のからみは映画のストーリーのネタとなりました。
コメント