ついに表題作「裏切りの塔」、そして「幻想的喜劇」と副題(?)がついている戯曲「魔術」を読んでいくぞぉ。
この作品集の最後の2編となります。
チェスタトン「裏切りの塔」。
実は前回の「煙の庭」と「剣の五」でも思ってたんだが、この「裏切りの塔」も2回読まないとなかなかストーリーの状況がつかみ辛いんだよなぁ。
この作品めちゃくちゃ難解だな。
これ2回でも厳しいかもしれぬ。
語りが朦朧としていて、かなり集中して読まないと何が起こっているか解らないなこれ。
ぐぬぬ。書かれた時代や国際関係、宗教的な知識が解ってないと腑に落ちにくいやつかこれ。
イギリスではなく、ヨーロッパ大陸のある架空の国家「トランシルヴァニア王国」というのが舞台である。
なに?うさぎの人形たちがいる国なんだろうかこれ。
シルバニアの家族でもっている国とは違う。
それだったら平和なのは間違いなかったのだが。
まあとにかく、レベルが高い読み物、という感じがする作品ではある。
物語の中の地理的イメージが解りづらいんだよなぁ。チェスタトンの比喩も癖があるし、これ日本人だとシャトー(城)とか磔刑像とか、だだっ広くて柱のような塔の修道院とか。
身近なものが一個もないんだよな。
我らビルの角あたりに日本人の情緒感じるよってになぁ。
思うに、この地理関係自体を特定の心理や精神の象徴として、チェスタトンは設定したっぽいな。
うん?
一方に恋焦がれる女性がいて、反対に宗教的施設があり、間は一本道。その途中には磔刑像があり。
で、知り合いの隠者はその修道院のさらに奥に住んでいるというわけかぁ。
この「裏切りの塔」もミステリの、謎解きの体裁をした作品だから、楽しむためにはなんとかこの状況と、主人公である英国人の立ち場をわかっておきたいところだなぁ。
なお、本の最後の解説を垂野創一郎という人が書いてるのだが、やはりこの「裏切りの塔」は解りにくい、呑み込みづらいといっておる。
やっぱりそうなんだよなぁ。このひと地図まで描いてくれておる。
この地図いいんだよなぁ。うおお垂野氏これ。
この「裏切りの塔」、難解である。ただものすごい強烈な印象を漂わせた作品であり、忘れたころにこの絵のような風景の場面を思い出すやもしれん。
チェスタトンの作品って本来ここまで解りづらくはないよなぁ。
今作では読者への解りやすいストーリーよりも何か別のものを優先したのかもな。
この「裏切りの塔」を執筆するにあたっては、何か思うところがあったのかもしれぬ。ブラウン神父とは違う神父が出てくるが。
スティーヴン神父だな。
この人の最期もあって、どこか悲しい結末の作品となっておる。
チェスタトン「魔術」。
この「魔術」は「幻想的喜劇」と副題(?)がついておる。
とあるイギリスの公爵の館の部屋(客間)で起こる出来事。公爵、その美しい(自ら自分を貴婦人といってしまう)娘、奇術師、アメリカから来た甥、聖職者に博士と、個性的な面々である。
こういう劇作が読めるのってレアだよなぁ。
舞台での登場人物のふるまいも書いてあるんだが。チェスタトンがこれ指定してるんだろうけど、意外と解りやすい。
当時それぞれの役を演じた役者の名前も書いてあるな。みんな知らない人である。
劇作品を読むのは前にバーナード=ショーの「人と超人」を読んだとき以来かぁ?
ショーの名前はこの「魔術」の中でも出てくるよな。訳者あとがきに書いてあるが、もともとショーの勧めで劇作品を書いてみたのが今作だという。
これ作中にショーの名前出すときニヤリとしてたのかな?
知らんがな。というか訳した南條竹則という人、バベルの図書館のアーサー・マッケンのときにも訳してた人やないか。
マジ?これは縁だなぁ。
というか普通にめちゃくちゃ活躍してる訳者の方であったという。
チェスタトンの劇作品が読めるのはレアであるが、いかにもチェスタトンの特徴出てるんだよな。
チェスタトンはすごい自分はこういう思想だ、こういうスタンスだ、というのがはっきりしてるよな。
作品が強いんだよな。
この劇作品も、チェスタトン作品の流れで読んだからそれほどでもないが、当時単品で見たら斬新だったんだろうな。
オリジナリティがすごいのだ。解説によると舞台は大成功だったという。
なおチェスタトンの多くの作品と違い、今作は謎解きは無し。
読者に明かされず、謎のまま終わっておる。謎は謎のまま。これが「魔術」だからなぁ。
ふむ。これでこの作品集は終わりかぁ。
だがまだチェスタトンのゾーンは終わっておらぬ。ブラウン神父ものはあらかた読んだことがあるが、情報によると読みこぼしていた作品があるんだよなぁ。
うむ。じゃあ次はその作品を読んでみるぞ。
「ドニントン事件」と「ミダスの仮面」というやつだぞぉ。
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