
イーストウッドの弟子、ロバート・ロレンツが監督した「人生の特等席」。
イーストウッドにとっては、自身以外の監督作品に出演したのは「ザ・シークレットサービス」以来19年(!)ぶりなのでした。
イーストウッド、主演のみは19年ぶり
やっぱりイーストウッドが主演でも別の人が監督したら、自分がイーストウッド映画と思っていたものと全然違うものになります。
やっぱり何かあるんですよね、イーストウッドが監督することで付け加えられる何かが。
ロバート・ロレンツは長い期間にわたってイーストウッドとともに映画製作をしてきた人ですが(「マディソン郡の橋」で助監督をしたときからの付き合い)
やっぱりそれだけでは、監督としての個性は似ないですね。やっぱりちょっと、イーストウッド監督・主演作品より深みが抜けちゃってる感じがします。
当時は「グラントリノ」があって、もうこれでイーストウッド主演は無いだろう、とどこかあきらめていたので、弟子の作品でもまた主演が見られるというだけで嬉しかったのを思い出します。
まあ、結局そのあと監督・主演の傑作「運び屋」があったわけですが。
イーストウッドの弟子、ロバート・ロレンツ初監督
「人生の特等席」はいい作品だと思います。なんかすごいそつの無い作品です。ロバート・ロレンツが、初監督なのに全く気負いがない、監督1作目とは思えないです。
まあ、映画業界での経験が長い人ですが。イーストウッド作品を連続で見てたら必ずこの人の名前がスタッフロールの始めの方に出てきていたし、DVDの特典映像の舞台裏が知れる話でも、この人はよくコメントしていました。
ロバート・ロレンツ自身はダークな作品が好みで、イーストウッド作品だと「ミスティックリバー」が好きだと言っています。
ダークといえば、「チェンジリング」や「J・エドガー」もダークかと思いますが。本人はイーストウッドのもとを離れて、ダークな作品を監督したいな、という気はあったようです。
製作中、ロレンツは師匠であるイーストウッドが現場にいることにプレッシャーも感じていましたが、初監督でイーストウッドが主演をしてくれるのは幸運でしかなかったでしょう。
おすすめポイント
やり手の野球のスカウトマンを演じるイーストウッド。伝説的なスカウトだったが、視力が衰えてきている。
今作は、キャラクターの設定と性格がいいのと、それがあまり極端でないところがまたいいです。
視力を失いかけて、娘とうまくいってないというのはネガティブではあるが、そこまで悲劇的な色調はないです。
6歳のころ母を亡くし、父とも不和である娘ミッキーですが、そこに絶望的な拒絶感はなく、すっと二人旅に移行します。
父娘の和解と、娘ミッキーの弁護士としての成功の行方という筋はありますが、焦点はやっぱりスカウトする選手の結果であり、観客の期待も実は憎たらしい高校生ボー・ジェントリが果たして本物なのか、一泡吹かせられるのか、というところです。
個人的には、ボブ・ガントンが出演してたのが嬉しいですね。ミッキーの弁護士事務所の上司役ですが、「ショーシャンクの空に」のあの所長役の方ですね。
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