スティーヴン・キングの短編「砂丘」を読みますよう。
短編集「マイル81」に入っております。この話にもキング自身による前書きが付いておる。
このキングの前書きが好きなんだよな。なんかお茶目でほっとする語りで。
けっこう正直に創作過程とか創作のきっかけとか書いてるんだよな。はじめ何のことかわからなくても、本編を読み終わってから見直すと意味が解るようになっている。
この話の前に「バットマンとロビン、激論を交わす」という話が収録されていて(なおバットマンものに詳しくないため本編は未読)、その序文で物語を書くときに「カップとカップの把手」という考え方があるといっておった。
物語の本体ともいえる「カップ」が思いついても「カップの把手」が見つからないと書き出せない、とキングはいってたな。キング流これ。
それで「バットマンと・・」は長い間書き出せなかったが、この「砂丘」は珍しく「カップと把手」が一度にまとめてやってきたらしい。
だからすぐに一気に書けてしまったのか。キングによるとフロリダの浜辺で犬の散歩をしていたとき、先の砂浜に光と影の加減でなにか書かれているように見えたことが創作のきっかけとなったという。
ふむ。
スティーブン・キング「砂丘」。
おお。けっこう読みやすい短編である。
短いのもいいな。こういう短いのがいい。
それになんか児童文学みたいな世界観もある。スティーヴン・キングのホラー、というより児童文学のこわい話特集に載ってるかのような。
でももちろん大人が読める作品である。読み始めて懐かしい感じがして良かったぞ。舞台がフロリダの海沿いの話なのだが、それだからか児童文学の海洋冒険もの的な風景がある。
今は年老いた、フロリダの地位の高い裁判官が主人公である。この老人だけが知る、ある島の隠された砂丘にまつわる物語。
キング自身前書きにおいてかなり自信作のように言っているが、たしかにすごく巧みに書かれているよな。
話のオチよりも、最後のあたりで述べられるある一つの恐怖の描写が印象的であったな。
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